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事件発生
「瀬里奈―」
焼香を終えて、通夜振る舞いの席に促された瀬里奈は、ひとりで行くにしても勝手がわからず、どうしようかと迷いながら外に立っていたところだった。本当なら幼馴染と一緒に参列するつもりだったが、彼女が急にアルバイトに行く事になってしまい、ひとりで参列したのだ。
名前を呼ばれて振り向くと、懐かしい友人の顔がある。
「由衣っ!」
思わず声が大きくなり、慌てて手で口を塞ぐ。「久しぶり」
声のトーンを落とすと、高校時代のクラスメイトである椎名由衣も近づいて来て、
「久しぶり。こんな風に会うなんてね」
「うん」
通夜の席である。しかも、高校時代のクラスメイトの、だ。
葬式に出たことはあるが、中学生の時に家族で参列した親戚の式だったので、長時間座っていて疲れた記憶しかない。
だが、今夜は違う。高校時代のクラスメイトだった高居凌の葬式である。
「ね、高居君と卒業してからも、会ってたの?」
由衣は、高居とは小中と一緒の、所謂幼馴染だ。
今日の葬式会場も、由衣の家が近いはずである。
それに引き換え、瀬里奈は由衣とも高居とも高校になってからの友人だった。由衣が不思議に思って、こう訊いてくるのは当然だろう。
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