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アルバイトまでは時間がある。今頃は瀬里奈の目論見では、裕一に慰められてふたりきりの時間を過ごしている筈だった。
自分の考えが甘かったと思い知らされた。
売店でカフェラテを買うと、中庭に向かう。学生が少ない場所を選んでベンチに座った。
裕一が自分を恋愛対象として見てくれるのは難しいとわかっても、そう簡単に諦められないと思っているが、心のどこかでは憧れているだけなのでは、とも感じている。
今まで、恋愛でこんなに悩む事はなかった。
好きか嫌いか、付き合いたいと思うか、そうでないか。瀬里奈が好きになった相手は、瀬里奈に振り向いてくれた経験ばかりだ。
中学生の頃からモテてきた瀬里奈は、わかりやすい感情で決めてきた。
「横井」
不意に名前を呼ばれて、瀬里奈が視線を上げると、小中高と一緒の本城直之が立っていた。
「本城」
「どうした、ぼんやりして」
「うん…ちょっと考えゴト」
ベンチの隣に腰を下ろした本城が、心配そうに瀬里奈の顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
「…平気。ちょっと理絵を怒らせちゃったダケ」
同じ学部なので、本城も当然理絵を知っている。
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