どうしてモナリザは微笑んだのか

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 西暦1500年ごろのヨーロッパ。レオナルド・ダ・ビンチは苦悩していた。  ダビンチの目の前には真っ白なキャンバスがあった。幾度かそのキャンバスに筆をつけようとしては、ためらってやめた。 「うーん」 「どうですか、ダビンチさん?」 「うーん。ちっともダメだ!」  ダビンチは筆を置いて、立ち上がった。そして大きく伸びをした。しかし、それだけでは心のモヤモヤは晴れてくれなかった。モヤモヤを発散する手段を探して、ダビンチはアトリエの中をグルグルと歩いた。 「ちっともなんですか?」  椅子に座ったまま、モナリザは行ったり来たりするダビンチを目で追いながら話した。  どうして他人事なんだ! ダビンチはモナリザの静かな口調にイライラを募らせた。  なぜ!? という気持ちをジェスチャーで表すように、両手を広げてダビンチはモナリザに歩み寄った。 「ちっともなんですよ!」 「ちっとも?」  歩み寄ってくるダビンチに驚きながらも、モナリザは変わらず静かな口調で聞き返した。
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