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クニオ君は狂ったように笑った。ダビンチは格下三流芸人に乱暴な下克上を受け、プライドをへし折られたのか、必要以上にメソメソしていた。まさに阿鼻叫喚。さすがのモナリザも精神の平静を保つことが困難になっていた。
ダビンチのたるんだ尻肉とその中心にぶら下がるふぐり。まるでフレンチブルドックの顔のように見えた。フレンチブルドックが踊っていた。フレンチブルドックがフレンチカンカンを踊っていた。
「ふふふ」
「あ!」
ついにモナリザは笑い出した。
「モナリザさん! 笑いましたね!」
歓喜の声を上げたのはクニオ君ではなくダビンチだった。
「やだ、ダビンチさんたら、お尻出して嬉しそうに、あはははは」
「こうしちゃおれん、スケッチじゃ! おい、クニオ君、ワシをこのままキャンバスの前に連れて行け!」
「え? え?」
クニオ君は訳が分からなかった。しかし、命令されるままにダビンチを抱えてキャンバスの前に連れて行った。ケツは丸出しのまま。
「あははは、いやだ、ダビンチさん。スケッチするならズボン履いて!」
モナリザの笑いは止まらない。
「いいぞ~、それ、クニオ君、もっとモナリザさんを笑わせて!」
クニオ君は戸惑いながらもダビンチを抱え直した。
「ほら、見てくださいモナリザさん!」
「え? なんです?」
キャンバスに上半身を向けさせながら、クニオ君はダビンチの体を折り曲げて、そのお尻をモナリザに向けて振った。
「ほら、レオナルド・ダ・ビンチの『ダ』の部分がブラブラ揺れてますぜ」
「あははは!」
「いいぞ~! その調子だ!」
「あははは!」
「いいぞ~! いい絵が描けそうだ!」
このように、現代に残る名画「モナ・リザ」の誕生には「なんちゃって・クニオ君」という人物が深く関わっていましたが、その誕生秘話が伝わる際、レオナルド・ダ・ビンチの名誉を守るため、その存在は歴史の表舞台から消されてしまったのでした。
おわり
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