11人が本棚に入れています
本棚に追加
誰だろう?
ドアスコープを覗くと、二人の男が立っていた。
私は、チェーンをかけてから、恐る恐るドアを開く。
男たちはこう聞いてきた。
「坂川由香さんですか?」
「……はい……」
生きているのがバレると殺されてしまうのではないか。
その恐怖には勝てず、私は由香になりすまして「はい」と言ってしまった。
「榛名美織さんとは、お知合いですよね?」
「…………」
何も言えなかった。
榛名美織は私だ。
しかし、男は私のことを坂川由香だと思っている。
それもそうだ。
だって、この部屋は坂川由香の部屋なのだから、私を由香だと思うのは当然だ。
「昨夜、榛名美織さんの部屋には行かれましたか?」
「……いえ……」
これは嘘ではない。
昨日、私は自分の部屋にいた。
私の部屋に行ったのは、この部屋に住む坂川由香の方であって、私ではない。
しかし、先ほど私は坂川由香だと答えた。
言っていることに整合性がなくなってしまった……
「そうですか。それでは、何か知っていることがありましたらこちらに連絡をお願いします」
そう言って男は名刺を差し出した。
男たちは刑事であった。
「それでは失礼します」
刑事たちは帰って行った。
私はドアを施錠し、また考え込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!