消し屋の竜胆(りんどう)

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あれから、どれ程の時が経ったのだろう。 私は、誰かが泣く声で目を覚ました。 (一体、誰の……?というか、私は体を消して貰った筈なんじゃ?) そんな疑問を感じながら、私はゆっくりと。 すると――私の丁度真下に、よく見慣れた光景が広がっているのに気が付いた。 そう、この場所は――。 (うちのリビングだわ……) どういう原理かは分からないが、どうやら私はリビングの天井付近にいて、真上からリビングを見下ろしているらしい。 と、そのリビングにある丸テーブル――そこに突っ伏す様にして、肩を震わせ泣いている人物がいる事に気付く。  あの後ろ姿、それに私が誕生日にプレゼントしたあの見覚えのある髪飾りは――。 (お母さん?!) しかし、私の声は一切届いていない様で、母はひたすらに泣き崩れていた。 私の写真を写真立てごと抱き締めながら、何度も、 「一体、何処に行ってしまったの、美紗緒。何で、何も相談してくれなかったの?私達は、家族でしょう」 呪文の様にそう呟く母。 そんな母の姿を見て、私は、今自分がどの様な状況に置かれているのか、やっと気が付いた。
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