51人が本棚に入れています
本棚に追加
(きっと、私が体を消してと願ったから……)
だから、肉体だけは要望通りに消されたが、魂は遺されたのでは?
魂の消却は、私の願いには入っていなかったから。
(でも、肉体が無くなって魂だけになってしまうなんて……。私はこれから、どうなってしまうの……?)
想像すらしていなかった状況に、困惑する私。
(だって、このままじゃ、お母さんに声もかけられないじゃない!)
――本当は、私は此処にいるのに!
(声がかけられない事がこんなに辛いなんて!)
と、私が苦労していると――眼下の母が不意に立ち上がった。
そうして、幽鬼の様なゆらゆらとした覚束ない足取りで、そのままキッチンに向かう母。
彼女はシンクの前でしゃがみ込むと――なんと、包丁を手に取った。
「こんな事になったのも全部、この町の奴等の所為だ……!あいつらが、傷付いた美紗緒を更に苦しめたから!」
最初のコメントを投稿しよう!