消し屋の竜胆(りんどう)

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(きっと、私が体を消してと願ったから……) だから、肉体だけは要望通りに消されたが、魂は遺されたのでは? 魂の消却は、私の願いには入っていなかったから。 (でも、肉体が無くなって魂だけになってしまうなんて……。私はこれから、どうなってしまうの……?) 想像すらしていなかった状況に、困惑する私。 (だって、このままじゃ、お母さんに声もかけられないじゃない!) ――本当は、私は此処にいるのに! (声がかけられない事がこんなに辛いなんて!) と、私が苦労していると――眼下の母が不意に立ち上がった。 そうして、幽鬼の様なゆらゆらとした覚束ない足取りで、そのままキッチンに向かう母。 彼女はシンクの前でしゃがみ込むと――なんと、包丁を手に取った。 「こんな事になったのも全部、この町の奴等の所為だ……!あいつらが、傷付いた美紗緒を更に苦しめたから!」
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