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(でも――)
私は、思うのだ。
「きっと、彼女はちゃんと消してくれたわ」
――あの時の、全てを諦めきっていた、弱い私を。
「だから、今の私が此処にいるんだもの。――ありがとう、消し屋さん。私、今度こそ、本当に大切なものを見失わない様にして生きていく」
私は、そう言って、窓辺の竜胆の花をそっと――優しく撫でた。
「消し屋さんの願いも、早く叶います様に」
私の言葉に、まるでお礼を言う様に、窓辺の竜胆が小さく揺れる。
そんな竜胆に微笑みながら、私は明日の学校の支度を始めた。
【完】
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