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――この様に、私は、転校して来たあの日から今まで、どんなに年月を重ねても、この町ではずっと『余所者』のままだった。
それでも私がここまで頑張って来られたのは、大切な母がいたからだ。
「辛かったら、学校なんて行かなくていい。逃げてもいい。私だけは何があってもあんたの味方だから!大丈夫!お母さんはね、若い頃いっぱい働いてたの。だから、その頃の貯金が沢山あるのよ。あんた1人位、ずっとずっと養ってあげられるんだから!」
私が東京でのいじめを打ち明けた日、私を抱き締め、そう告げてくれた母。
しかし――その母が今は、私が中学校で皆と上手くやっていると思っているのである。
「遠足楽しかった?」
「給食の班ではどんな話をしたの?」
私が新しい環境に馴染めていると一切疑わず、毎日、私より楽しそうにそう尋ねて来る母。
そんな母の質問に、私はいつも、上質な嘘で答えていた。
その嘘がバレそうになると、また新しい嘘で誤魔化して……嘘を嘘でどんどん塗り固めて。
私は、何時の間にか、嘘を吐くのが家族で一番上手になっていた。
それでも――そこまでしても私は、母に心配をかけたくなかったのだ。
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