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その日から、私の思考を占領していたのは『いっそいなくなってしまいたい』という暗い考えだけだった。
(透明人間なのだから、私がいなくなったところで、どうせ誰も悲しみはしないだろう)
日に何度もそんな考えが頭に浮かぶが、その度に母の笑顔や優しい言葉が浮かんで来て――私は自らに浮かんだ考えを、必死に打ち消していた。
(いなくなってしまいたい。でも、自殺は駄目だ。そんな事をしたら、きっとお母さんは悲しんでしまう)
『大好きな母を悲しませたくない』――そんな思いだけで、日々、命を繋いでいた私。
そんな私の耳に【あの噂】が飛び込んできたのは、丁度私達の高校受験が本格化した頃だった。
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