消し屋の竜胆(りんどう)

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「ねぇねぇ、知ってる?町の外れにある龍王寺(りゅうおうでら)の庭にね、紫色の剣を持った不動明王(ふどうみょうおう)の像があるんだって。その像の足元に竜胆(りんどう)の花を供えて、『消し屋さん、消したい物がありますから私の所に来て下さい』ってお願いすると、何でも消してくれる『消し屋』が現れてくれるらしいよ」 その話を聞いた瞬間、「これだ!」と思う私。 消し屋に『私』を消して貰えば【自殺】ではないのだから、お母さんも悲しむ事は無いだろう。 そんな的外れも良い所な考えを、当時の私は名案だと勘違いし、酔いしれていたのだ。 ――無論、それ程までに当時の私の精神が追い詰められていた、と言えばそれまでだが。
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