今、春が来て

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この世に生まれて来た全てのメロディーには、乗せるべき言葉が決まっている。 赤い糸で結ばれた言葉がある。 俺はそう信じている。 そして、長い事連れ添って来た秋葉の…… と言うと気持ち悪いけど、あいつの奏でるギターの音は、いつでもすぐに俺の中に雪を降らせる。 言葉の雪だ。想いの雪だ。 雪の結晶は、一つ一つ全てが違う形をしているという。 同じ物は二つとなくて、降り積もる場所を探しているんだ。 どうしてこんなイメージが浮かぶ様になったのか。 それはもちろん、俺の原点であるあの歌を目指しているからだ。 あの歌の中で降る雪を。 季節外れの春の雪を。 主人公はどんな想いで見ていたのか、そんな事を考えた時からだ。 空回りしやすい俺の情熱が、今しっかり大地を掴んで走り出す。 ゆっくりと、あの歌に出てくる汽車の様に。 「汽車」と歌われているそれはきっと特急だと思うけど、新幹線みたいな静かで早い電車じゃしっくり来ない。ロマンがないよな。 もくもくと煙を吐きながら走る、蒸気機関車がいい。揺れが酷くて快適ではなくても、火を燃やして懸命に走る方がいい。 優しく舞い落ちる言葉と想いの雪の中、情熱を燃やして走る汽車。 そして離れて行く二人はどんな姿で、どんな関係なのか。なぜ東京で見る雪は最後になったのか。それからどうなったのか。 あの歌ではそれをあえて語らず、ただワンシーンを切り取って見せる事で、聴く人の想像に任せる手法を取っている。 もしも二人が大人だったと仮定すれば。 「夢に破れた悲しい別れ」の方が歌にしやすいけど、「お互いの夢を叶えるための旅立ち」とも解釈出来る。 そうだとしたら。 いつか二人はきっとまた……
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