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俺達は、なんのためにウィンタムという汽車に乗り込んだのか。楽な旅ではないと知っていたはずなのに。
雪に震えて春の声も聞かず、夢も叶えずに帰るにはまだ早すぎる。
早すぎるよな。
「なあ冬木」
「ん?」
「言っとくけど、今のところ評価されてるのはお前ばっかりで俺はつまらん。
だけどな、いつか雪村さんに言わせてみせるから。秋葉の作る曲が必要だってな」
「おう、もちろんだ!」
言わせてやれ、お前は天才なんだから。
いつか……
そして俺もいつか、雪村氏に分かってもらいたい。
分かってもらえる様な歌詞を。
俺の言葉で書いてみせたい。
ほら、優しい雪が降っている。
汽車は力強く走り出す。
俺は今日の、この雪を忘れない。
秋葉と見たこの雪が。
今はまだ無理だけど、いつか。
いつか俺達の歌を聴いてくれた、全ての人の心にそっと降ります様に。
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