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「ありがとう。でも、何とか自分でやりたいんだ。悪いな」
秋葉にそう言って電話を切ったものの、作詞はなかなか進まなかった。
オレクロの曲を作っていたのは、彼女達より知名度が高いかもしれないミュージシャンだ。
改めて聴いてみると素晴らしい仕事をしている。
オレクロの事務所は本当にこの人を切ってしまうつもりなのだろうか。何かトラブルでもあったのかな。
俺は毎日オレクロのメンバーの写真集を恋人の様に眺め、彼女達のライブ映像をエンドレスで観ている。知らない人が見たら引くだろうな。構うもんか。
そして曲に向かう。
この世に生まれて来た全てのメロディーには、乗せるべき言葉が決まっている。
赤い糸で結ばれた言葉がある。
俺はそう信じている。
言葉とメロディーが、間違えずに俺の中で出会った時に、良い歌ができるのだと。
今回作るのは夏の歌だけど、作詞をする時いつも俺の中では雪が降っている。
言葉の雪だ。想いの雪だ。
雪の結晶は、一つ一つ全てが違う形をしているという。
同じ物は二つとなくて、降り積もる場所を探しているんだ。
さあ、もっと降れ。降ってくれと願う。
鳥島さんのため、ウィンタムのため、オレクロのため。
そして俺のために。
俺の言葉よ、俺の想いよ。
ああ、お願いだ。もっと降ってくれないか。
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