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発注を受けた作詞だけではなく、ウィンタムとしての活動もしなくてはならない。
ネットTVの出演や雑誌の取材も入っていたし、動画サイトの公式チャンネルも更新しないと忘れられてしまう。少ないとは言えせっかく登録してくださったファンに申し訳ない。
こうしてまたもギリギリになってしまったけど、デモ音源の五曲は何とか仕上げた。
あの歌を超えたい、なんてとても言えないが、俺としては会心の出来と言っていい。
これでダメなら、今は縁がなかったって事だ。
そして……
「はじめまして。アコーギレコードの雪村と申します」
五月になる頃、俺と秋葉は鳥島さんと一緒に、オレクロのプロデューサーに招待された。
雪村氏は50代くらいだろうか。金縁眼鏡で大学の講師の様な、堅そうなイメージだ。
「オレクロもデビュー10周年を迎えましたが、時代は変わった。固定ファンは掴んでいるものの、正直セールスは落ち込んでいてね。
この辺で賭けに出る事にしたんですよ」
なんと、大御所から動画サイトの歌い手まで。
ロック、ポップスからニューミュージック、歌謡曲、演歌まで。
あらゆるジャンルで作詞を受けてくれそうな人に声をかけたらしい。
「ご存知かもしれませんが、オレクロにはデビュー以来ずっと楽曲のプロデュースを担当してもらったミュージシャンがいる。
現在の彼女達があるのは彼のおかげと言っても過言ではない。
だが、オレクロはアイドルではあるが、歌を聴いてもらえるグループを目指して来た。
そろそろ彼から卒業して、いろんな曲にチャレンジさせてみたい、そう考えているのです」
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