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おばあちゃんは僕が行くと「あら! 嬉しいわ!」と喜んでくれた。たまにしか会いに行かないから嬉しいみたい。
少しお話してから、一緒に朝ご飯を食べた。
そして食べ終わってから、おばあちゃんが変わったことをした。
「こうするのよ」
おばあちゃんはティッシュペーパーを1枚取って、丸いのを載せた。
それから丸いのに、おばあちゃんが名前をつけることにしたのさ。元々ちゃんとした名前があるみたいだけど、話の流れで、新しく名前をつけようってことになったんだ。
「シロちゃんにしましょう!」
おばあちゃんは1分くらい「うーん、うーん」と考えてからズバッと言った。
「そのまんまだね。でも、とっても良いと思うよ」
僕は笑った。
「あら、嬉しいわ。決定ね」
おばあちゃんも笑った。
「じゃあ、シロちゃんを今から口の中に消しちゃうわね」
おばあちゃんがニッコリと笑う。
「えー、かわいそう!」
僕はシロちゃんを掴もうとした。
「シロちゃんのお仕事を取っちゃダメ!」
もの凄い勢いで、おばあちゃんが怒る。怒られた僕は、しょんぼりする。
「さぁ、飲み込むわよ!」
おばあちゃんがキリッとした顔をして、シロちゃんを口の中に放り込む。そして、お水をゴクッ、ゴクッ、ゴクッと音を立てて飲んだ。
「シロちゃん。あなたを口の中に消した理由はね、血圧が高いのを抑えてもらいたいからなのよ。ごめんね」
おばあちゃんはお腹を触りながら言った。
なるほど!
粒のお薬は、ティッシュペーパーの上に出すようにすれば、テーブルの上をコロコロ転がって床に落っこちたりしないんだね! そして、シロちゃんは血圧のお薬だったんだ! あとで、きちんとシロちゃんの元々の名前を覚えようっと。
僕は、新しいことを知るって面白いなって思った。学校の勉強と関係なくても、勉強は勉強だ。優しいおばあちゃんが、勉強を好きになるきっかけを作ってくれたんだ。
「全部が勉強なの」
おばあちゃんが言った。けど、僕は、おばあちゃんの言っている意味がわからなかった。一生懸命勉強すれば、わかるようになるのかなぁ。
僕は、その日、家に帰ってからも、ずーっと、シロちゃん、ちゃんとお仕事しているかなぁって心配だった。
シロちゃん、頑張ってね!
僕も勉強を一生懸命頑張るからね!
僕は眠る前まで、ずーっとシロちゃんを応援していた。
(おわり)
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