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「転校してきた源川春樹です。…よろしく。」
高二の夏、初めて男に恋をした。
目が合った瞬間、運命だと思った。
それまで運命なんて、信じたこともなかったのに。
転校生の源川春樹。
細身で物静かな男だった。
独特なミステリアスさを感じた。
今まで男なんてあり得ないと、親友にも豪語してきたほどで、だから最初は自分の神経を疑った。
だが、話せば話すほど、話も趣味も合って、惹かれた。
こんな感情、今まで男に抱いてきたことなんてなかったのに。
悔しいけど、認めざる得なかった。
俺は男の春樹が好きなのだと。
普段は何かあったら、何でも親友に相談していたが、今回の事はさすがに言えなかった。
いくら幼馴染みと言えど、今回の事は言えるわけがない。
そうこうしている内に、春樹とどう接したら良いのか、わからなくなった。
それは相手も同じだったようで、しばらく距離があったが、玉砕するのを覚悟で俺は春樹に告白をした。
友達としても、何もかもを失うのを覚悟で。
それほどに好きになっていたから。
春樹は嬉しそうに涙を溢していた。
『僕も同じだった。
君を初めて見た時から好きだった。』
『初恋だったんだ。僕もシュウが好きだ。』
『こんな僕だけど、付き合って欲しい。』
春樹は涙ながらに言って、俺と春樹は付き合うことになった。
二人だけの、親友にも言えない秘密。
しばらくは初々しい恋人として、隠れて付き合っていた。
幸せだった。
男に対して、こんな感情を抱くなんて思わなかったから。
春樹となら、共にいたい。
毎日思ってた。
だけど、春樹はそう思っていなかったらしい。
付き合ってしばらくして、春樹から少しずつ連絡が途絶えていった。
学校でもどうしてか、避けられるようになって、距離を取られるようになった。
俺は悲しくて、でも付き合っていたらそんな事もあるかと思って耐えていた。
だが、やがて別れを切り出された。
『シュウ以外に…他に好きな人が出来てしまったんだ…。
ごめんね、シュウ。』
俺は春樹からそう言われ、ショックを受けた。
本気で好きだった。
今まで好きになった女の子でも、ここまで好きになったのは、春樹が初めてだったから。
どうしようもなく悲しくて、辛くて、俺は全てを親友の樹にぶちまけていた。
『シュウちゃんが好きだった男に捨てられた…?
ああ、大丈夫。安心して?
俺は男同士に偏見とかないから。』
『その男もシュウちゃんを捨てるなんて、見る目ないね?』
『可哀想なシュウちゃん…。
シュウちゃんをこんな目に遭わせた奴が許せないな…。』
『シュウ、大丈夫。…可哀想なシュウを、俺が慰めてあげるね?』
あれ?何で俺は樹に押し倒されているんだ?
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