三章 11

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 小走りで私は近づいた。 「ヒュームが、そなたにきつく進言したと言っていたのが気になってな」 私は嬉しくなって、バージル様を部屋の中へ招き入れた。  「バージル様。今日はテオドール様をお召になるとは聞いてませんでしたが……」 部屋の中でラント君が、ベッドを整えてくれていた最中だった。 「すまん、ラント。今宵はこちらに泊まる」 騎士服のバージル様は、ラント君にすまなそうに話した。  「ではご用意いたしますね」 にっこりと笑って、ベッド近くのサイドテーブルに果実水の入った水差し等その他を用意して、部屋から下がって行った。  「迷惑だったか?」 バージル様が私を気遣ってくれている。 「いいえ。嬉しいです」 バージル様に微笑みかけた。  二人でベッドの端に座り、話をした。 「ヒュームは、王の忠実な臣下だ」 「はい」 私は分かっている。小国の王子という己の立場も。  「だが、時に。やり過ぎる」 バージル様は苦々しい顔をし、私を見る。 「テオドールを下に見るのは許さない。ヒュームにまた何か言われたなら、次は俺に言え」  バージル様は、私を大事にして下さるのが分かって嬉しかった。
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