クロとラビ

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クロとラビ

ーーー まずは、僕の自己紹介をしようと思う。 僕はカカオの国の住人、名前は「クロ」。ほかのチョコレートたちよりも、色黒で、体が小さくて、友人は愚か、両親にも見捨てられた存在。 このカカオ国は、とても寒い国。他の種族なら、参ってしまうだろう寒さでも、僕らチョコレート族にとっては、適温で、とても住みやすい国だ。 なぜなら、僕らチョコレート族は暑さが苦手て、長時間、一定の暑さの中にいると、溶けて消えてしまう体なのだ。 さて、そんな僕は今、未曾有の危機にさらされている。 カカオ国の住人、家族に忌み嫌われ続けた僕は、ついに国を抜け出し、自由の身になったのだった。 でも、チョコレート族には適温があり、カカオ国以外に、僕に似合う場所には宛がない。 とりあえず、寒い場所へ、寒い場所へ、そうして歩き続けて3日間。 体のあちこちから、黒茶色の汗が流れ始め、形を保てなくなり始めた頃。 いよいよ、歩く気力も失い、倒れ込んだ土の上。寝ずに歩き続けたからだろう。疲労に悲鳴を上げていた僕の体は、睡眠を求めた。 寝てはいけない。そう分かっていても、瞼は重くなっていく。命の終わりには逆らえない。僕は意を決して深い眠りについた。 そう、思っていた。どのくらい眠ったのだろうか? 僕の体に直に伝わる冷気が心地よく、ゆっくりと瞼を開く。 優しい冷たさが、僕の体を運んでいる。真っ白な体に、緑色の耳が生えた不思議な生き物だ。 周りの景色にも目を移す。何処を見渡しても真っ白な世界。カカオの国では、砂糖や塩でしか見たことのない、珍しい真っ白な世界。 「あ! 目が覚めたんだね! 良かった! 」 僕を運ぶその白い物体が、僕の目覚めに気づいて足を止める。 僕は、見慣れぬ土地に足をつけた。足の裏からひんやりと心地よい冷たさが、全身を駆け抜ける。 「ここは? 」 「初めまして。ここは、スノーランド。氷族の国だよ! 私の名前は、ラビ! 高台から、世界を見回してたら、あなたを見つけて運んで来たの!」 「ラビ? 氷族? スノーランド? 」 分からない事ばかりだ、でも、このラビという、氷族が僕を助けてくれた事だけ理解した。 「助けてくれてありがとうラビ。僕は、カカオ国からやってきた、クロ。よろしく」 「クロ! よろしく!」 ラビは可愛らしくウィンクをして見せる。 「早速だけど、案内してあげるよ! この国を!」 「え? え? ちょっと!! 」 こうして僕は、ラビに振り回される形で、この国の住人になることになった。
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