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それから、加藤君と会うことが更に頻繁になった。加藤君とは同じ高校だし、帰宅部っていうくくりで考えると、同じ志しを持った同志とも言える。
私は、私の想いを届けることに躍起になってたのかも知れない。そう、ちゃんと相手のことを見れて無かったかも知れない。
「お待たせー! 今日も早いね玲美!」
「よっ、好青年の加藤君、そこに座りたまえ」
「で、また今日もかしこまって話って?」
伝えよう、ストレートに。
「あのね、加藤君……、今までずーっとはぐらかしてごめんね……」
私はそれまでの雰囲気に配慮しないで、ガラリと変えた。
「う、うん……」
「今日私は、私の今の想いを伝えます」
「うん……、お願いします」
「私は……いえ、私も加藤君のことが好きになりました。だから……」
その私が次の言葉を言おうとした時に、彼の顔がぐっと近くなった。とっさに目を瞑った。何が起きようとしたのか、直ぐ分かったから。
彼と私の唇が、ふと触れたんだ。
「ご、ごめん。でもなんか、やっぱり好きだから。今、玲美が好きだからさ」
その彼はカッコよくて、見とれてしまった。私もすごく恥ずかしい気持ちになったけど、きっと彼から見たら少しは可愛い顔になってるんだろう。
「人の目も憚らずに?」
「は、はは、何憚らずにって? 小難しい言葉使って」
「あっ、こ、これは。良いじゃん別に」
「あ、そっか、小説が好きなんだもんな、玲美は。国語も得意なんだよね?」
「うん、まぁーね」
こういうとこはちょっとキライ。でも、やっぱり彼の透き通る笑顔は好きだな
「……よし! 玲美、いや、ちゃんと言おう。脇坂玲美さん、改めて俺の彼女になって下さい!」
「うん、謹んでお受けします。宜しく加藤一也君!」
愛実。貴女のお陰で、私は私をもっと知ることが出来た気がするよ。
これからも宜しくね、愛実。
そして、私の大好きなキミ。
「本当に好きだよ、一也君」
ただ私は、『届け』と願ったんだ。
私の思いに正直に。
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