雪の思い、で

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その男性、齢17にして至って普通の男。 しかし雪に疑問を抱くことはこの世界では普通ではなかった。 「なぜ雪がとぎれないのだろうか、そもそもこの雪はどこから来るのだろうか」 こうした疑問を抱いては他の住民に投げかけたりしていた。 「別段雪が一年中降ることに疑問を持ったことはありません。それが理由で困ったこともありませんし、当たり前なのです、それが自然というもの、自然に対して疑念を持つということは矛盾のしていることだと思いませんか。」 「しかし自然に対して何も考えることがないということは自然への敗北ということにはなりはしないか。」 「勝つ負けるという問題ではありません。自然への畏敬の念が風流というものです。私これから友人と遊ぶのでこれにて失礼いたします。貴重なお時間ありがとうございました。」 そういって住人の子供は走り去っていった。 男はまた考えた。 「雪は冷たいはずなのに気温が低くないのはおかしくはないだろうか。そうは思わないか」 「さあ、そういうもんだからね。生まれてこの年まで疑問に思ったことはないね。今どきの若い者は考えることが違うね。気温がどうたらときたもんだ。君も無駄な事に人生の時間を費やすのではなく、もっと高尚な物事への本質へ耳を傾けてはどうだろうか」 「無駄かどうかは決して他人に決めることはできるものではないだろう。飽くなき疑問への考察は人間として生まれ持った特権ではないだろうかと思うがね。あなたはより崇高な人生の目的がおありのようだ。とんだ邪魔をした。わたしももう一度人生の時間について考えてみることにしよう。あなたは既にお分かりのようにわたしが見つけることはできないと察しているとは思うがね」 「好きにしろい。雪が永遠と途切れることのなようにあなたの答えというものも見つかることはないだろうさ」
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