生首さんに憑かれた日々

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 ゆうちゃんと一郎太くんを呼び戻して、先頭を歩く小夜さんについていく。小夜さんの足取りは軽い。 「主人が寛容だと言っても、流石に気軽に外を出歩くと家臣に私も叱られたので、今こうしているのは新鮮ですね」  生首さんも大概変わっているが、小夜さんも小夜さんだな。四百年前の常識は想像もつかないが、みんな楽しそうだ。現代に生まれ変わってもみんな上手くやれそう。ゴロゴロダラダラしていたい私とは違ってアクティブにあちこち出歩くんだろうな。同じ家族になっていたら、小夜さんがグイグイ生首さんを引っ張っていくんだろうな。  墓地の更に上。少しだけ山中に入る。そこで私はそれをハッキリと見た。多分あれも幽霊なのだろう。大きな石の上で座禅を組む人。目も閉じてピクリとも動かない。 「与平」  生首さんが呼んだ。おそらくそうだと思っていたが、本当にビンゴだった。  与平さんは静かに目を開く。 「四郎様! 小夜様! 一郎太様にゆう様まで!」  与平さんは石を降りて地面に膝をついて頭を下げた。 「まさかまさか、また会えるとは思いませんでした! 四百年のときもこのときのためにあったようです!」 「与平、頭を上げてくれ。わしらはもう人生を終えたもん。もう主従など関係ない。わしももう首だけだからな」  生首さんが、あははと笑うが全く面白くない。四百年前ジョークだろうか。 「いえ。四郎様のお身体だけ埋葬しましたが、首を取り返せなかったのは私が至らなかったため。面目ありませぬ」  与平さんは、頭を地面に擦り付ける。いや慕われ過ぎだろ? 「あなた、これで天に昇れますね」  小夜さんはうんうんと頷く。 「与平、身体のある場所に案内してくれ。そして共に天に昇ろう」 「勿体ないお言葉。しかしお身体はここにございます」 「どこ?」  つい私は声をあげてしまう。 「四郎様、この娘はどなたで?」  なんか失礼な言い方だなぁ。言わないけど。 「与平、この者はさらし首のわしを運んで小夜と子供たちを見つけてくれて、ここまで来るのに手伝ってくれた者だ。恩人だもん」 「おお。私からも礼を言う。四郎様に魂が消えるまで、もう会えぬと思っていた。名はなんと?」 「志乃という。さて、与平、わしの身体は?」  与平さんは私に向かって深々頭を下げてから、目の前の大きな岩を指差す。 「四郎様のお身体はここに埋葬しております。この石は墓標でございます。敵に分からぬように線香一本も立てませんでしたが」 「ゆう、地におろしてくれ」  生首さんを抱えていたゆうちゃんは生首さんを石の前に置く。  すると生首さんが浮かび出す。いや浮かんでいるんじゃない。地中から身体が出てきている。生首さんが身体と繋がって身長が伸びているんだ。
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