生首さんに憑かれた日々

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生首さんに憑かれた日々

 暇だなぁ。春日下がり。春休み。やりたいこともやる気も特に出ない眠い時間。部屋で大の字になって天井の染みを数える。なんか人の顔に見える。犬にも見える。猫にも見えるし、なんかよく分からないものにも見える。とにかく時間だけはやたらとある。無趣味だと一時間が過ぎるのも早過ぎる。家族はみんな仕事に行っているし、やりたい放題なのだけど、ただボーッとしている。 「JKの春休みがこれでいいのか?」  友達はいるけど連絡するの面倒くさい。彼氏はいないけど、作るの面倒くさい。趣味を見つけるのも、その前に行動しなきゃなんないの面倒くさい。 「詰んだかなぁ」  何を詰んだのかは私自身にもよく分からない。分かっているのは天井の染みを眺めている今はなんとなく負けた気がする。こういうときはスマホに限る。なんとなく眺めているだけであっという間に時間が過ぎる。負けた気はするだろうが、天井は染みよりはマシだろう。SNSを開こうとか思ったが、うっかりいいねとかしてSNS見てるのバレて話しかけられても面倒くさいと一瞬迷う。 「こういうときは一人で楽しめるものだな」  時間を持て余すと独り言も多くなる。一考してから私の住む町の名前を打ち込む。なんとなく見てて飽きないもの。それは地図だ。近場でも知らない場所はあるのだから有効な暇つぶしだろう。  スマホに映し出された地図は私の現在地を示す。そこから少しずつ縮小して町の地図を眺める。学校とか役所とか、その辺は流石に分かる。スマホの地図を右に左に確認していって、見つけてしまった。 「この町に城跡なんてあるんだ……」  全く知らなかった事実。そりゃあ町として成立しているんだから歴史はあるだろうが、お城があったとは知らなかった。小学中学高校、そんな話題は聞かなかったのでそれは盲点だった。 「何気に近いな……」  大の字になったままスマホを眺めてうーんと唸ってみる。 「行くか」  無趣味だって散歩くらいはする。散歩だって天井の染みを眺めているよりずっと健康的だ。それに城跡に散歩なんて歴史好きを一時気取れる。行動するための理由なんてそのくらいでいい。好奇心を刺激したと思えば何もなくても、それなりに満足感はあるだろう。  結果から言えば何かあったのだが、始まりなんてそんなものなんだ。
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