生首さんに憑かれた日々

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 この地の城は小城でありその城主の名は伝わってはいない。戦死であったか病死であったかも定かではないが、小城は侵略により焼け落ちたと口伝がある。その後、再建もされることはなかった。再建される戦略的価値はなかったと見られる。城の名も不明。この地は時代により呼称が変わっており、領主も主だったものの名は不明。近代にこの地に城跡があったであろう可能性が見つかり城跡とした。  生首を無視して看板の説明を読んだが、なんだこのフワッとした説明は。結局何も分からない。しかも城跡って言われたの近代ってどのくらいの近代なんだろう? 古くてもせいぜい昭和の気がする。よく城跡にするって言えたなぁ。 「あのぉ無視しないでくれます? 今まで無視されすぎてハートがガタガタなんですが」  生首はどうやら気弱のようだ。見た感じ落ち武者っぽいのになぁ。気の弱い武士もいるんだなぁ。でも無視だ。  あまりにガッカリな城跡だが、一応来た証拠は残したいのでスマホのカメラを起動する。 「いや、あなた、生首見てやる態度と行動じゃないでしょ? 写したらわしも写っちゃうよ?」 「それもそうか」  スマホをポケットに入れた瞬間ヤバいと気付いた。 「やっぱり見えてんじゃん! 聞こえてんじゃん! 無視って酷くない!? ここでずーーっと気付いてくれる人待ってたのに酷くない!?」 「いや。生首と関わりたくはないでしょう? 普通は気付いてもスルーだからね?」  会話が成立してしまった。呪われたりするのは嫌だから言葉責めで打ち負かすことにした。ハートをボロボロに打ち砕けば生首も諦めるだろう。何のために声をかけてきたが分からないが、会話が成立する以上打ち負かすのは可能だ。 「こっちだって事情あるのに生首だってだけでスルーは酷くない!? わし、何百年も気付いてくれる人待ってたんだよ!?」 「生首なのがそもそもスルーされる原因だろうが。不穏しか生み出せないくせにふざけたこと言うなよ?」  我ながらシュールだと思う。生首と口喧嘩している。周りに人がいなくて良かったよ。生首と口論している女子高生なんて噂にしかなんないじゃん。 「……好きで生首になったんじゃないもん……。仕方ないじゃん。生首にされちゃったんだから……」  ぐすんとべそをかく生首。うわぁ。まるで私がいじめっ子みたいじゃん。 「大体なんで生首なのさ? 見た感じ幽霊なんでしょ? 口調もガキっぽいし」 「そりゃあ城を攻められて負けて打ち首にされたからだし、口調は見える人が話しやすいように行き交う人の会話聞いて学んだんだもん。なんか幼い子供ばっかり来るからこうなったんだもん」 「だもんって……。てか城攻められてって偉い人だったの?」 「一応、城主なんだもん。小さい城だったけど」 「あんたが?」  小城の城主は小者なんだろうか? いや死んでも現代に合わせようとしているあたり、向上心はあるようだ。
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