生首さんに憑かれた日々

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「でもさ気付いてくれる人がいなかったってのは嘘でしょ? 現に私はこうやって話してるんだからさ?」  生首はぐすんと鼻をすすった。 「いたよ。いたさ。でもさ生首の話なんか誰も聞いてくれないもん。みんなただただ逃げていく。呪ったりしないのにさ。ただお願いしたいだけなのに……」 「ふうん。一応聞くけどお願いって何?」  生首の顔がぱぁっと明るくなる。 「聞いてくれるの!? わしね、ここでさらし首にされたけど、身体は別の場所で野晒しになったんだよ。そこに連れて行って欲しいんだ。わし、首だけだから動けないのよ」 「身体のところって……。そこで何するのさ?」 「きっと霊体でも手足があると動けると思うのよね。動けるようになって妻子が亡くなった場所を探したいの。きっとみんなわしと同じく現世を彷徨っているはずだから」  むうと考える。不憫ではある。不憫ではあるが、私がやることなんだろうか。こういうのって霊媒師さんとかの役目じゃないの? 「後生だもん。お願いだもん。話を聞いてくれたの君だけなんだ。君を逃したらまた何百年って話を聞いてくれる人を待たなきゃなんないの」 「ふう。分かった。分かったよ。これも縁だから。でも呪ったりしないでよね? あなた名前は?」 「吉崎四郎一右衛門と申すもん」 「ふうん。長ったらしいから生首さんって呼ぶね。私は志乃。いい名前でしょ?」 「名乗った意味が……。志乃? 志乃と言ったか?」 「そうだけど、何かした?」 「いや……。なんでもないもん。じゃあ一緒に家族を……」  生首さんはゴニョゴニョ言ってるが私は悩む。どうやって運んだら違和感がないのだろう。抱えて歩くのはちょっと。見える人からしたらホラーこの上ない。見えない人からしたら私が変な格好しているように見える。小脇に抱える? いやないな。そんなボールみたいな持ち方は生首さんに申し訳ない。  悩んだ私は生首さんを肩の上に乗せた。これなら普通に歩ける。 「志乃……、お前年いくつだもん?」 「華の女子高生だよ」 「女子高生が肩に生首乗っけるのか……」 「あんたのためだろうが! ぶん投げるぞ!」  そう言えば肩に乗せてから気付いたけど普通に生首さん、触れたなぁ。 「ところでなんで私触れたの? 幽霊って触れないものじゃないの?」 「おそらく志乃は霊的な力があるのだろうな。わしもまさか女子高生の肩に乗る日が来るとは思わなんだ」 「ふうん。じゃあ行こうか。あたりはある?」 「いや全く。町内のどこかとは思うが、妻子がどこで死んだかはわしには全く分からぬ。とにかく歩き回らないと」 「なんだよ……。すぐ終わらないじゃん。サクッと終わる気してたのに」 「サクッと終わるならわしも何百年もここにおらんて」  それもそうか。 「とりあえず城跡内を歩くよ」
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