生首さんに憑かれた日々

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「志乃〜。ご飯だよ〜」  お母さんの声が聞こえてガバリと起きた。 「寝すぎたなぁ」  手を口に当てて欠伸をする。部屋は暗くまだ日が沈むのは早い。そういえば何かあったような? 欠伸をして出た涙を指ですくって部屋を見渡す。  生首があった。 「きゃああああああ!!」 「志乃! どうした!?」  お父さんが慌てて部屋まで駆けつけた。そこで昼に生首さんに会ったことを思い出した。 「ちょっと怖い夢見てさ」 「そうか。良かった。ご飯が冷めるから早く来なさい」  お父さんは去っていく。どうやら生首さんは見えなかったようだ。 「酷くない?」  お父さんが去ってから生首さんは口を尖らしてつぶやいた。 「ごめんね。寝て起きたら生首、部屋にあるの慣れてなくて」 「別にいいもん。驚かれるの慣れてるし」  一応謝ったが部屋に生首あるほうがおかしくない? 映画とかドラマで言ったらホラーかミステリーじゃん。私、悪くなくない? 「はいはい。ちょっとご飯食べてくるから大人しくしていてね」  平常心に戻ったら生首さんなんか怖くない。ただのなんか残念なおじさんだもん。  気を取り直してご飯を食べて、お風呂入って、パジャマに着替えて寝る前にベッドに寝っ転がってSNSを見る。いつもの日常を過ごしていると生首さんが声をかけてきた。 「なぁ志乃」  ベッドの上で何? と生返事をする。どうせ大したことじゃないだろうと。 「志乃の本棚は点字の本がいくつかあるな。理由はあるのか?」 「なんでって点字読めたら素敵じゃない? 目が見えない人と分かり合えるんだから」 「何かきっかけがあったのか?」 「特にないよ。まぁよく夢でさ、目の前が見えない夢を見るんだ。それくらいかな? 声は聞こえるし何かを触る感覚あるんだけどね。きっかけらしいきっかけはそれかな?」 「なるほど」 「それがどうかしたの?」 「いや。いい心がけだと思ってな。生首のわしが言うのもなんだが、志乃は目が見えて良かった。生首のわしとも普通に話してくれるし」 「関係ないかもね。目が見えなくとも生首さんと話したら普通に話すだろうし、てか生首さんが無理矢理声かけてきたんじゃん」 「それでも今まで相手をしてくれる人はいなかったからな」 「一人も?」 「いや。一人はいた。その話はおいおい話すもん。今日はもう寝るもん。流石に遅い」 「親みたいなことを言うね」 「これでも人の親だもん」 「はいはい。また明日も生首さんと出掛けなきゃならないから寝ますよ。おやすみ」  灯りを消してベッドに潜る。  そして翌朝。 「きゃああああああ!!」  また生首さんに驚いてしまった。お父さんに怖い夢を見たと同じ言い訳までした。
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