生首さんに憑かれた日々

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「生首さんが生首なのいけないと思うんだ」 「どうしようもないもん。生首だからこんなことになっているんだから」  生首さんは申し訳なさそうだ。確かにどうしようもないんだけど、生首さんとの時間が増えたとしても寝起きに驚くのは変わらない気がする。 「絶対に今日見つける! 身が持たない! 怖い夢を毎日見てることにするとお父さんが変な心配する!」  心配され過ぎると病院連れて行かれる可能性もある。どこも悪くないんだから、それは避けたい。 「頑張るもん。わしも毎回叫ばれると悲しいもん」  生首がそんな話をするのはシュールだ。今まで散々叫ばれているはずなのだが。 「ところで生首さんのお子さんって何歳だったの?」 「七つと四つだったもん」  今日は朝から外に出ているので時間はたっぷりある。それでも足が止まってしまった。 「そんな幼い子が処刑されたの?」 「戦国とは、そういう時代だもん。敵の血筋を絶やすのは当たり前だったもん」 「酷い! 生きていれば素敵なこともあったはずなのに!」 「子供たちも分かってるはずだもん。領主の子に生まれて、領主が滅ぼされればどうなるか。その時代に生きて子を守れなかったのは、わしの責任だもん。責めるならわしを責めてくれ」 「できる訳ないでしょ? 奥さんとお子さんの霊に会いたいって四百年彷徨ってる生首さんをさ」  生首さんはクスクスと笑う。 「志乃は優しいもん。見苦しいと思っていたが、志乃に会えて少し気持ちが軽くなったもん」 「必ず見つけてあげるから。生首さんは優しいお父さんだからお子さんも奥さんもきっと待っているはすだから」 「頼むもん」  と言ってもどこに行くか。悩んでしまう。 「ねぇ処刑場ってどこが多いの?」 「有名人なら人が見に来やすい場所だろうが、多いのはやはり町の外れな気がする。わしは処刑とか嫌いだから領民を殺したことは一度もないが」 「町の外れか……。生首さんはお城で殺されたのに?」 「わしは攻められたその日に死んだので。殺されたあとに首を斬られたんだもん」 「あんまり聞きたくない話だなぁ。でもいいや。あてが出来た」 「どこかあるもん?」 「町の外れに原っぱがあるんだ。色んなものを建てようとしたんだけど、大抵、話自体なくなっちゃう場所なんだ。気にならない?」 「確かに」 「ちょっと遠いけど一日かけたら着けるよ」 「本当に世話になる」  生首さんの身体を探すより、奥さんとお子さんを先に探してあげたい。きっと待っている。 「でも生首さんの身体も見つけなきゃ成仏できない?」 「おそらく。それでも後回しでいいもん。志乃が探したいほうから探してくれ」 「了解!」  歩く速度も速くなる。何か目標を見つけると人って気力が漲るんだな。今まで生きていてそんな気持ちになったのははじめてかも知れない。生首さんはもう死んでいるけど、できたら幸せな気持ちでいて欲しい。決まった目的地に向けて進む。今日は水筒も持ったし、ある程度の食べ物もある。絶対今日見つけるんだ。
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