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で、今日は公園だ。
いい歳した男二人、新しくできた公園の青々しい芝生に座って、500円以下の牛丼を食べている。
やたら空が青い。
桜井がぼんやりと言った。
「火星の一日って地球より40分くらい長いんだって」
「へー」
「……食いつき悪いな」
たかが40分かよ、というのが北山の本音だった。
火星の一日なんて想像上では、もっと何百時間とか、単位から変わるのかと思っていたから。
「40分長いっていいよな」ーーと、桜井がつぶやいた。
「そうか?40分なら、そんな変わらねーだろ。寝て終わる」
「つまんねーやつ」
「じゃあ訊くけど、40分増えていいことある?」
「うーん……サブスク解約し忘れそうになったときとか?あ、まだあと40分あるじゃん、ラッキーって」
「しょうもな」
桜井が、牛肉の横に会った紅しょうがを乗せてきた。
桜井はいつもこうして嫌いな食べ物を北山に押し付けてくるが、自分だってさほど得意なわけじゃない。
けれど、そうして文句を垂れているうちに習慣化してしまい、今では押し付けられることへの嫌悪感も、それを口の中に入れる抵抗感も、さっぱり消えてしまった。
いつものように桜井の代わりに食べていると、
「昔、五人くらいで遊園地行く話あっただろ?」
と桜井が唐突に話を振ってくる。
一瞬、何のことだかわからず、箸を止めて記憶をさかのぼる。
けれど、なんのこっちゃない。
すぐに思いだした。
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