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「オムライス?」
颯太が尋ねると小形はコクコクと頷いた。
「そう! カトゥンのオムライスは店の味だよ、まじで!」
「言い過ぎだ、小形」
「バターライスの上にオムレツがのっかっててさ、ナイフで切れ目を入れると、トロットロの玉子がライスを覆い隠すんだよ!」
聞いているだけでもよだれが出てきそうなグルメリポートに、俺も颯太もリーダーもごくりと喉を鳴らした。
「オムライス好きの俺が言うんだから、カトゥンのオムライスは本物だぜ!」
「是非食べてみたいものだな」
リーダーがにこやかに微笑みながら言った。
「てか、小形くん。オムライス好きだったの!?」
それが初耳だよ、と颯太は笑った。
「おぅ! 俺卵料理には目がないぜ!?」
小形は嬉しそうに笑いながら、温泉卵も好き!と騒いだ。
「僕はお刺身が好きなんだ! カトゥン、魚捌けるんだっけ!?」
颯太は目を煌めかせながら加藤を見上げると、馬鹿に背の高い加藤はニッコリ笑いながら頷いた。
「さばけるよ」
「カッコいい~!」
目を煌めかせている颯太の視線が一心に加藤を見上げると、嫉妬? いや、別にそんなことくらいで嫉妬するわけはない。するわけはないが、いい気はしない。魚くらい俺だって捌けるっつうの。
なんて、対抗心が湧き上がるのは、これは嫉妬なのか? いや、違う。ただ単に事実としてある俺のスキルが疼いているだけだ。
「今度ご馳走してやるよ、颯太。リーダーもどう?」
加藤はその腕を見せびらかしたいのか否か、そんなお誘いをサラッと言いやがるが、サラッと俺を誘わない辺りが全くもって腹立たしい。
「行く行く! 食べたい食べたぁい!」
颯太は飛び跳ねて喜んでいる。イラッとなんか……してねぇし。
「リーダーは何が食べたい? リクエスト受け付けるよ?」
加藤の言葉にリーダーは、少し考えてから、じゃあと返答した。
「ナス料理」
茄子料理?
全員が目を点にしただろう。しかし加藤は「分かった」と快く頷き、ちらりとこちらに目配せした。
「西は?」
え、俺?
まさか俺にまで聞いてくるとは思いもしなかった。咄嗟に食いたい物など出てくるわけもなく、小形が「どうせ海老フライだろ」と笑うから、違うと言い返してしまった。
「だったら何がいいんだ?」
嫌味のない言い方で加藤が尋ねてくるから、俺はこんなタイミングで自分の好物を暴露することになった。
「鯖の……味噌煮」
「渋ッッッ!!」
間髪入れない小形のツッコミで場は沸いたが、俺は慌てて訂正した。
「いや、違う。俺は単に和食派なだけだ」
言い訳がましく聞こえたかもしれないと思いながらも、事実そうなのだから仕方ない。
「ブリ大根とか?」
「おひたし、とか?」
「お豆腐とか?」
加藤、颯太、小形が順に俺へと聞いてきて、最後リーダーが「茄子とか?」と尋ねるので、それだけは否定させてもらった。
「茄子をそのまま食う趣味はない」
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