今夜はご馳走

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* * * * * 「オムライス?」  颯太が尋ねると小形はコクコクと頷いた。 「そう! カトゥンのオムライスは店の味だよ、まじで!」 「言い過ぎだ、小形」 「バターライスの上にオムレツがのっかっててさ、ナイフで切れ目を入れると、トロットロの玉子がライスを覆い隠すんだよ!」  聞いているだけでもよだれが出てきそうなグルメリポートに、俺も颯太もリーダーもごくりと喉を鳴らした。 「オムライス好きの俺が言うんだから、カトゥンのオムライスは本物だぜ!」 「是非食べてみたいものだな」  リーダーがにこやかに微笑みながら言った。 「てか、小形くん。オムライス好きだったの!?」  それが初耳だよ、と颯太は笑った。 「おぅ! 俺卵料理には目がないぜ!?」  小形は嬉しそうに笑いながら、温泉卵も好き!と騒いだ。 「僕はお刺身が好きなんだ! カトゥン、魚捌けるんだっけ!?」  颯太は目を煌めかせながら加藤を見上げると、馬鹿に背の高い加藤はニッコリ笑いながら頷いた。 「さばけるよ」 「カッコいい~!」  目を煌めかせている颯太の視線が一心に加藤を見上げると、嫉妬? いや、別にそんなことくらいで嫉妬するわけはない。するわけはないが、いい気はしない。魚くらい俺だって捌けるっつうの。  なんて、対抗心が湧き上がるのは、これは嫉妬なのか? いや、違う。ただ単に事実としてある俺のスキルが疼いているだけだ。 「今度ご馳走してやるよ、颯太。リーダーもどう?」  加藤はその腕を見せびらかしたいのか否か、そんなお誘いをサラッと言いやがるが、サラッと俺を誘わない辺りが全くもって腹立たしい。 「行く行く! 食べたい食べたぁい!」  颯太は飛び跳ねて喜んでいる。イラッとなんか……してねぇし。 「リーダーは何が食べたい? リクエスト受け付けるよ?」  加藤の言葉にリーダーは、少し考えてから、じゃあと返答した。 「ナス料理」  茄子料理?  全員が目を点にしただろう。しかし加藤は「分かった」と快く頷き、ちらりとこちらに目配せした。 「西は?」  え、俺?  まさか俺にまで聞いてくるとは思いもしなかった。咄嗟に食いたい物など出てくるわけもなく、小形が「どうせ海老フライだろ」と笑うから、違うと言い返してしまった。 「だったら何がいいんだ?」  嫌味のない言い方で加藤が尋ねてくるから、俺はこんなタイミングで自分の好物を暴露することになった。 「鯖の……味噌煮」 「渋ッッッ!!」  間髪入れない小形のツッコミで場は沸いたが、俺は慌てて訂正した。 「いや、違う。俺は単に和食派なだけだ」  言い訳がましく聞こえたかもしれないと思いながらも、事実そうなのだから仕方ない。 「ブリ大根とか?」 「おひたし、とか?」 「お豆腐とか?」  加藤、颯太、小形が順に俺へと聞いてきて、最後リーダーが「茄子とか?」と尋ねるので、それだけは否定させてもらった。 「茄子をそのまま食う趣味はない」
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