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第1話:小田農園
「健康被害なんか起きてないって何度もお客さんに説明したんだけど……申し訳ない」
段ボールを抱えて、申し訳なさそうに店長は私に頭を下げる。
私は段ボールの中をちらりと覗き見る。お母さんと一緒に丁寧にひとつ、ひとつ袋詰めしたうちの玉ねぎがぎっしりと詰まっていた。
「……いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました」
私は店長から段ボールを受け取った。ズシッとした重みに腰と心が堪える。これはほとんど売れ残ったのだろう。
三日前、昔から取引のあるスーパーへ玉ねぎを出荷した。久しぶりにお店にうちの玉ねぎが並んだ。長かった、ようやくここまで戻ってこれたんだ。
なのに――
「鳩子ちゃんのところとは、うちのじいちゃんの代からの付き合いなのに力になれなくて本当に申し訳ない」
店長、もとい昔から家族ぐるみで付き合いのある健おじさんは何度も私に頭を下げる。
その表情を見て、益々いたたまれない気持ちになる。謝るのはこっちの方なのに。
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