転生先は推しの敵

9/22
前へ
/107ページ
次へ
風呂から出ると、父は俺の部屋までついてきて、ベッドに横になった。俺も父の横に寝そべる。 「おやすみレイくん。いい夢が見られるといいね」 「はいはい、おやすみ」 俺の額にキスをする父に適当に返事をする。俺の頭を撫でる父を止める気力はもうなく、うとうとし始めてからすぐに眠りについた。 こんな時、安心して眠れるのはやはり父親だからだろうか。 俺の知るゲームでのレイドルフの父というのは息子になど興味がなく、魔族が恐れ慄くほどに殺戮を好む男だった。いや、後者は今も変わらないが。ゲームではレイドルフの過去回想のみに登場し、レイドルフは父を退け魔王になっている。 俺は父を倒すつもりなどない。と言うかまず、勝てるかどうかわからない。それに父の力は強大な抑止力になるだろう。退けるなんて勿体無い。先ほども言ったが、俺は父のことは嫌いではないし、退ける理由がないのだ。 物語に変化が起きている。もはやゲームなど関係ないのだろう。この世界は現実で、すべての命が実在するものなのだ。 こうして魔界での一日が終了した。 ヴィクターがこの世に誕生するまであと数十年。人間達と国交を確立する。それが俺の目的だ。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加