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どれだけ時間がかかろうとも、リシャルト様が目を覚ますまで必ず。
私の言葉に、ハーバーさんは深く頭を下げた。
「よろしくお願いします」
◇◇◇◇◇◇
ハーバーさんはリシャルト様の治癒を続ける私の邪魔をしないためか、部屋を出ていった。
屋敷での治癒を始めて30分が経ったが、リシャルト様はまだ目を覚まさない。
私が小さく息を吐き出すと、メイドさんたちが静かに部屋にやってきたところだった。
「奥方様……。無理はなさらないでくださいね。」
サイドテーブルに、そっと水差しとコップを置いてくれる。
ありがたい……。
「ありがとうございます」
メイドさんたちも、ハーバーさんから事情を聞いたのだろう。いつもは小鳥のようにさえずっているのに、今までにないほど静かで、差し入れを置いただけで音を立てないようにして部屋を出ていった。
◇◇◇◇◇◇
メイドさんが来てくれてから、どれだけ時間が経っただろう。
屋敷に帰った時は夕方だったのにもう日が落ちきって、窓の外には星がきらめいていた。
――リシャルト様、いつになったら目覚めてくれるんだろう……。
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