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それでも、大好きなラノベの展開を我が身で体験出来るかもしれないわくわくには勝てそうもなかった。
「承知致しましたわ。ただ、わたくし、地球人のいう『異世界』がどういったものなのか詳しくなくて……」
女神様は困ったように眉尻を下げる。
たしかにいざ異世界とは、と聞かれても一言で説明するのは難しい。
そこで、私はふと思い出した。意識を失う直前、自分が皐月先生の新刊を握っていたことを。
「私が地球で最後に持ってた本みたいな感じだと嬉しいんですけど、あれを見てもらうことってできます……?」
ダメ元でそう尋ねると、女神様はぱちぱちと大きな青い瞳を瞬かせた。
「こちらですか……?」
女神様がそっと片手を宙にかざすと、どこからともなく1冊の文庫本が現れる。
それは、私が読みたくて読みたくてたまらなかった皐月先生の新刊『偽物聖女ですが王太子からの愛が重すぎて逃げたいです!』だった。
「そうそれ!」
私は食いつくように身を乗り出す。
ファンタジーに定評のある皐月先生のことだ。まだ読んでいないが、安心安定の異世界に違いない!
「なるほどなるほど……」
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