3・お飾り聖女は求婚される

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3・お飾り聖女は求婚される

 エマ様がアルバート様の背からそっと姿を現す。  ふわふわとした長いピンクブロンドに、薄茶の瞳。小柄で華奢なエマ様は、いわゆる守ってあげたい小動物系女子だ。  ちょん、のアルバート様の金の房がついた豪華な上着の裾をそっと握る様は、とても可愛らしい。  だが、私はエマ様のことを苦手としていた。  なぜなら――。 「聖女さまぁ、こんにちはぁ」 「……こんにちは」  妙に間延びした甘ったるい口調で、調子が狂ってしまうからだ。  エマ様はいわゆるぶりっ子であり、前世の世界で言うならば、男子からは好かれるが女子を敵に回しやすいタイプの令嬢だった。 「エマ、お飾りの聖女様よりアルバート様のお役に立てると思います」 「そうですか……」    聖女の仕事を辞められるのは嬉しいのだが、後任がエマ様だということにはいささか不安があった。  エマ様は最近治癒士の力に目覚めたばかりで、地方教会に所属して数ヶ月、という非常に経歴が浅いのだ。  エマ様に夜会で一目惚れしたらしいアルバート様が、エマ様を持ち上げ過剰に褒めたたえているが、実力のほどは不明。超怖い。
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