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少女の両親は、ともに独身時代には熱心に仕事に励み多くの功績を残してきた。二人は、あるプロジェクトがきっかけで出会った。互いに、仕事に対する熱心な態度に惹かれあっていった。そして、プロジェクトが成功し、二人には関わる機会がなくなっていった。その寂しさから、二人は交際を始めた。そんな日々が過ぎていき1年が過ぎた頃、二人のもとに一つの命が訪れた。
母は、とても優秀な研究者であった。そう、彼女は研究者という仕事が生きがいのようになっていた。そのため、仕事を辞めたくなかった。しかし、それ以上に母親になることに憧れがあった。そして学業や仕事に夢中だった彼女にとって彼は、初恋の相手であった。だから、彼女に結婚も子どもも諦めたくはなかった。そう、彼女は、自分の意志で子を持つことを決めたのだ。
また、彼も彼で戸惑いがあった。彼は、順番がずれていると世間体を気にする両親から責められ、今結婚するなら子どもを連れて帰省することは認めないと突き放された。また、同僚や上司から揶揄われ、後輩には陰口をたたかれる。しかし、彼もまた、結婚を諦めるつもりはなかった。彼は、これ以上好きになれる人はいないと彼女のことを大切に思っていた。だから、彼女にだけ責任を押し付けたくはなかった。
その結果、二人は一部に反対をされながらも祝福をされながら結ばれた。それから、しばらくして二人の間に子どもが生まれた。
彼女は、両親に子どもを預けて職場に復帰した。しかし、復帰したとしても休職前のポジションは、後輩に奪われてしまった。彼女に与えられたのは、新入社員のような事務的なものであった。また、彼女の給料は、以前よりも少なくなってしまった。それにも関わらず、出費は増えるばかりだった。彼女は、次第に娘が生まれてきてくれたことに感謝できなくなっていった。
それでも彼は、真面目で凜とした彼女に惹かれていた。その彼女を幸せにしなければ、ならないとも思っているようであった。娘のこともとてもかわいく思っており、この子のために頑張ろうと仕事を今まで以上に頑張った。増える出費や妻の分まで懸命に働いた。そのため、子が生まれてからも、早くに帰宅できず、育児は任せきりであった。それが彼女を余計に追い詰めていたことには気づきもしなかった。
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