うまれ

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うまれ

 一人の少女は泣いていた。サビだらけの赤く黒くなったすべり台のしたで、今日も泣いていた。  子どもたちの楽しそうな笑い声が響いている公園。けれど、誰も少女に気づかない。他の子たちは、ゲームもしくは友達とのおしゃべりに夢中で気づきはしない。  しかし、それが少女にとってせめてもの救いであった。誰にも気づかれないからこそ、正直になることができた。唯一の少女が自分の気持ちに嘘をつかずにいられる場所だった。  
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