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案内されて座ると、おじさんが迎える。
「直美ちゃん、きょうも来てくれたんだね」
マスクごしだが、いつもの柔らかい声。
「もう。29歳になっても、ちゃんだね」
「いつまでも可愛い」
途中でことばを止める。外で何か小声がしたからだ。
「さっさと、やってよ」
ぶっきらぼうだが、私には照れもある。ほんとは小学校のころから、あこがれていたオトコ。こんな密室で、こういうことをするなんて夢みたい。
おじさんは前から知っている。お菓子を貰ったし、遊びにも連れて行ってくれた。こうして会えるのが分かってから、ときどき会っている。
じゃあ始めるよ、と言うように肌を撫でる。
「やっぱり怖いな。痛いでしょ」
「ちょっとはな。直美ちゃんは痛がり屋だなー」
彼は笑いながらも、準備しだす。
「それを見ると。やっぱり怖い」
「きょうは止めて置こうか」
「いや。おじさんがするなら我慢できるよ」
私のことばを待ってたように彼は真剣な顔になった。
ぶすっ、突き刺さる。
痛い。何回しても、なれない私。
でも我慢。いや、彼を好きだし、こうして会ってるだけで、しあわせなの。
彼が抜き去る。
「ありがとう直美ちゃん。おかげで助るよ」
おじさんから、感謝されるのが、大人の女性と認められたようで嬉しい。
だから、やめられないの。
献血は。
なにかありましたか。
了
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