9 プルメリアと未来

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 そして和泉はそっと私の肩に触れた。  ハワイでの挙式、宝物を触るみたいにベールをあげた和泉の姿が思い浮かぶ。和泉が私を見る瞳はいつだって優しくて、大切にされていると思い知らされてしまう。  チャペルに差し込む光みたいに優しいあたたかい瞳だ。 「なんだか二回目の挙式みたいですね」 「ものすごく私服だけどね。――でも、ドレスを着ているあの日よりも本当に挙式な気がする」 「なんせ愛し合ってますからね。あ、でもちゃんと地元でも結婚式しましょうね。結婚式三回するみたいになっちゃってますが」 「ふふ。でも全部ちゃんと意味があるからいいんじゃないかな?」 「それもそうですね」  和泉が笑顔をこぼしてから、私たちは身体をピッタリとくっつけてキスをした。  あの日はお互いの幸せを願って、今日は二人の未来を祈って、次は大切な人たちに向かって愛を誓う。  あの日は罪悪感があった、きっとお互いに。  本当の愛が誓えなかったことを。かわりに幸せを願ったことを。  だけど、あの日があったから、今の私たちがある。   「幸せなことは何度あってもいいもんね」 「ハネムーンでもまた挙式しちゃいますか」 「いや。それはいいよ、もう」  二人で顔を見合わせて笑う。    チャペルからは青い空と海がどこまでも続く。私たちの未来はのびやかだ。  きっと空は青いだけじゃない。荒れ狂う雨の日もどんよりとした曇りもあるし、日差しが強すぎる日も。  それでも。  祭壇に置かれているプルメリアのブーケを見つめる。一枚一枚に込められている意味のように和泉を大切にしたい。  私は空に誓うように、もう一度プルメリアのブーケを抱きしめた。  fin  
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