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西原咲良は私の救世主だった。 うちは母子家庭で、母は看護師だった。家事のほとんどは私がこなした。嫌々やっていたわけではない。料理は好きだったし、洗濯掃除も嫌いじゃなかった。しかし、その一方でほとんど友達はできず、いや、たぶん自ら友達の輪に入ろうとしなかったせいだ。 中学の三年間で、私の性格はすっかり暗くなってしまった。 高校進学を辞めることも考えたが、私を大学に行かせるため仕事を頑張っていると母から聞かされ、ちょうど新設校の募集を見つけてM高校に入った。 気持ちも新たにと思ったが、そう簡単には行かず、数日はひとりぼっちでお弁当を食べていた。そんなある日のこと、私に声をかけてきた子がいた。 「私、こっちに越してきて間もないから友達いないの。できたら、いっしょにお弁当食べてくれる?」 真っ直ぐに私を見るパッチリした瞳が印象的なポニーテールの女の子が咲良だった。 私は咲良といっしょに演劇部に入部した。 帰りが遅くない文化部なら、と思い入部を決めた。案の定、当時の演劇部は演劇の経験がない先生が顧問で部活自体も緩く、帰宅が特に遅くなることもなかった。 中間テストの発表の日、咲良の家に誘われた。 「いっしょに勉強しない?茜は数学得意でしょ?私苦手だから教えてほしいの。換わりに英語教えてあげるから」 咲良は文系、私は理系とそこはハッキリしていた。 西原家に訪問すると、咲良の母親が満面の笑みで迎えてくれた。 「咲良とお友達になってくれて、ありがとうね。今朝摘んだハーブがあるの。ハーブティーは飲める?」 飲んだことはないが飲んでみたいと言うと、咲良の母親は再び破顔一笑した。
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