片想い

佐久間

「タクマ、これどう思う？」
僕の名前は佐久間昇太(しょうた)。
僕の名前をしょっ中間違えるのは上司の雪村(ゆきむら)虹子(こうこ)。警視庁捜査第一課強行犯係雪村班の班長だ。
一見したところ整った顔立ちに加え、この美しい名前に刑事などというインパクトありすぎる職業とは結び付くはずもない。僕もまんまと騙された。夫が行方不明で相談に来た人妻だと勘違いして、鋭い眼孔で睨まれた。そのイメージが一年近く仕事をしてきた今でも払拭できないでいる。
てきぱき仕事をこなすその姿は女性警察官のみならず僕らぺーぺーの刑事からも憧れの存在ではあったが、冒頭にも述べたとおり、人の名前をまともに覚える気はない。
とはいえ、事件関係者の名前は絶対に間違えない。それに、僕のことを佐久間と呼んでくれるときもある。そういうときは決まって事件に入り込み考えを巡らせているときだから、ますます意味不明なのだ。
「ちょっと！サクタ、聴いてる？！」