出社

2/2

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
一週間も時が過ぎれば自ずと人間性が出てくる。もちろん性格的なものもそうだが、仕事に対してのモチベーションやできる人、できない人の分別だ。田西は間違いなくできない人だった。 パソコンを叩かせればブラインドタッチはできないし、間違いが多い。グラフの作成も一流とはいえないものだ。資料作りは高校生レベルで到底一流企業であるユーゼロ商事の社員の作成するものではなかった。気がつけば窓の外を眺めている。 純平はポンコツの下につかされてしまった。まだまだ未知な部分が多いと言えばそうなるが、もうこの一週間で田西のポンコツ具合がわかってしまった。 当の本人である田西もプライドなどは持っておらず、ここで何となく仕事をしていれば最低限のお給料が貰えるといったふうだった。 一応田西の営業管轄の取り引き先はあるものの、いつ潰れるかわからないような、古くて小さな掘っ建て小屋の会社や、社員数人で細々と何かをやっているようなところらしい。田西が「俺だって取り引き先あるんだぞ」と愚痴を言うようにブツブツ言っているのを、隣のデスクで聞いていた。 田西本人曰く、新たな顧客の開拓や、新しい商材の提案などはしばらくやっていないということだ。 もっと頼りがいのある人材をよこせと五社連続で担当替えをされて以来、自信を失ってしまったらしい。それ以来、会社での風当たりもより一層冷たくなったという。 純平は傍にいて思うが、それは致し方ないことだと思った。まだ大学を出たばかりの社会を知らない若造の純平が、この人は出来ない人だと感じ取れてしまうこと自体が終わってる。しかもその下に付けられた純平も終わっている。 まだ社会人が始まったばかりだが既に終わってしまったと言っても過言では無い。やはり学歴格差をふつふつと肌で感じる。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加