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シロ曰く、この更地に家があったが今はもう取り壊されたというのだ。そこでひとつの疑問が浮かんだ。シロが轢かれたというのはいつの話なのか。純平はてっきりものの数日前、あるいは数週間前程度にしか考えていなかった。目の前の更地を見ればそれが完全な間違いだと言うことに気がつく。 「シロの家はこの更地になっちゃったんだろ?じゃあどうやって探すんだ?」 純平はシロを問い詰めるように聞いた。 シロは困ったような表情を浮かべた。実際顔面はほぼ崩壊しているので、困ったような雰囲気を感じた。 「市役所で転居先とかわからないかしら。名簿がなにかあるんじゃなかったでしたっけ?」 雪絵の言う市民名簿なるものがあると聞いたことがある。お金を出せば閲覧ができると聞いた。その名簿にどこまでのことが書かれているのか検討もつかない。 「おいシロ。たろうちゃの苗字ってわかるんか」 純平の問いかけにシロは首を振った。慣性の法則で垂れ下がった目ん玉がブラブラと揺れた。首の付け根辺りの贓物も少し揺れた。 「んじゃ探しようがないじゃないか」 純平のその言葉にシロはムキになっなった。さっきまで左右に振っていたシッポをピンッと天に突き上げた。 「そんなすぐに諦めないで欲しいワン。まだやれることがあるかもしれないワン」 そう言うと、目ん玉と贓物をプルプルさせながら歩き出した。 「どこ行くんだよ」 純平の問いかけを無視し、シロはただ歩き続ける。 「まさか歩いて探そうって言うんじゃないよな」 「そうよ。日本は広いの。闇雲に歩いてただけじゃたろうちゃには出会えないわ」 シロは振り向いた。 「じゃあ他にどんな方法があるって言うんだワン」 その顔は真剣だった。きっと生前はそのたろうちゃに沢山可愛がって貰ったんだろう。たろうちゃが初めて女の子に告白をする。上手くいって欲しいと飼い犬ながら思っただろう。その結末も知らないまま、轢かれてしまった。無念と言えば無念だ。 「わかったよ。とりあえず今日はできることないから帰ろう。帰って作戦会議をする。それでいいか」 純平の言葉にピンッとしていたシッポが左右に揺れた。余程嬉しかったのか、シッポの揺れに連動して下腹部辺りの贓物もプルプルしていた。
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