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三人は純平の休みに合わせて本気探偵事務所を訪ねた。いつものようにソファーに座る。 「先日はご連絡ありがとうございました。依頼した件ですがどこで見つかりました?」 本気はプリントアウトした何枚かの紙をテーブルに広げた。 「あの更地の近くですよ」 広げられた写真を見ると見た事のある道路だった。 「ここは?」 「あの更地の向かい側のアパートです。アパートの103号室にいらっしゃいました」 写真にはアパートを出入りする男性の姿が収められていた。 「たろうちゃだワン」 横に座るシロが興奮している様子だ。 純平が明らかに予想していたものと違った。それでも興奮するシロが真実を物語っていた。 「なにかおっしゃいましたか?」 訝しげに尋ねられた。 「いえっ、どうもありがとうございました」 「とんでもないです。お力になれて良かったです」 契約通りの金額を支払いその場を後にした。 探偵事務所を出たその足で現地に向かう。 「懐かしい匂いだワン」 現地に着くとシロが感慨深そうに呟く。この間も来ただろ。 前に家があったという更地の、ちょうど道挟んで向かい側にそのアパートは建っていた。そこまで古さは感じられないのはまだ建築してから間もないからなのかもしれない。クリーム色した二階建アパートの103号室にたろうちゃはいると言う。本当にたろうちゃなのだろうか。違った場合は再び本気探偵事務所に連絡をして再調査をしてもらわなければならない。 そもそも今在宅なのかもわからない。確認のため部屋の前まで行ってみると中から物音が聞こえた。在宅中だ。103号室の玄関が見える位置に待機した。外出する確証はないが、今日のうちにこの案件を終わらせたかった。 「たろうちゃの告白は上手くいってるといいワン」 シロが呟く。 住んでいた家が更地になるほど時が経っている。そして探偵事務所で見せられた写真。初めての告白が成功したかどうかが問題なのではない気がする。 三十分くらいすぎた頃。一台の車がアパートに横付けされた。中からはこの場に相応しくないような派手ないでたちの女性が出てきた。こちらからは顔は見えないが雰囲気から察するにケバいだろう。女性はドアミラーで顔を確認した。 女性は103号室の扉をノックした。 中からたろうちゃと思われる男が現れた。 「あぁ!たろうちゃだワン。昔と全然変わってないワン」 隣で興奮するシロがいるが、純平の目には四十前後の単なる小太りのおじさんがいるだけだ。元は大きかったんだろうと思われる目は、肉付きのいい頬に押し上げられて自然と笑っているように感じられた。扉から少し出した顔に張り付く長めの髪は、遠目からでもギトついているのがわかる。Tシャツの襟はダルダルだ。 「たろうちゃ、凄いワン。告白上手くいったんだワン」 たろうちゃは玄関先の女性を値踏みするように眺めると「チェンジ」と言って扉を閉めた。 締め出された女性はヒールの音をカツカツさせながら、待機していた車に再び乗り込み走り去った。 「シロ、良かったわね」 雪絵に頭を撫でられたシロは目ん玉をブラブラ揺らし、露出した贓物も激しく揺らして喜んだ。 いやいやいや!ちょっと待て。俺が聞いていたのは小学生のたろうちゃだ。探偵事務所で見せられたのも単なるおっさんでしかなかった。本当にたろうちゃなのかも疑わしい。
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