戦士

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「石詰さんさ、たぶん俺にはあんたの願いは叶えられそうにないぞ」 休日の昼間、テレビをなんとなくつけて純平はラーメンをすすり、目の前で軍人将棋で熱戦を繰り広げている石詰に向かって伝えた。唯一調理ができるインスタントラーメンは純平の昼のテッパンだ。出かける用事がなければだいたいラーメンをすすっている。本当はYouTuberのように美味しいラーメンを食べに行きたいが、経済的にまだまだそんな余裕はない。前に支払った探偵費用が重くのしかかった。まだ上京して間もないので、会社のビルの周りはまだ何とかわかるが、土地感が無さすぎて出かけるのをおっくうに感じていた。 正直自宅にいてもそんなに退屈はしない。 「なんでだワン。ボクのときみたいに探偵に頼めばすぐ見つけてくれるワン。あの本気探偵事務所に頼むんだワン」 「あのさ、イヌ」 「イヌじゃないワン。シロだワン」 「探偵費用がどれだけかかったか忘れたのか」 「忘れてないワン。バカにしないでだワン」 おいおいおい!だったらなおさら軽々しく口にするな。一小隊全員となればいったい何人いるんだ。費用が何倍にも膨らむ。でも俺が言いたいのは、それよりももっと重要なところだ。こいつらは気づかないのか。それともあっちの世界は時間感覚がないのか。 「あのさ、石詰さんさ」 改めて声をかけると手に駒を持ったまま視線を純平に向けた。 「今って石詰さんの生きてた時代よりだいぶ進んでると思うんだ。戦争にかりだされてるって時点で今の時代じゃあない。その生き残りの人たちを探すっていうのは正直難しいと思うよ」 純平の言葉に雪絵とシロは石詰の反応を待つ。 ふいに石詰がテレビに向いた。テレビでは夏休みの旅行先にオススメの映像が流れていた。外でアクティブに体を動かす特集だ。シーカヤックやフォレストアドベンチャーなど多岐にわたって紹介されていた。 「あっ!ここ懐かしいです。ワタシよく行ってました」 その言葉に一同がテレビを見ると、アスレチックのような作りのものが幾つも並んでいる施設が映っていた。どう考えても現代のものだ。いったいどういうことだ。
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