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石詰に聞くとよくここに行っていたらしい。そうなると純平が想像していた状況と明らかに違う。国家のために戦争に赴き、仲間のために命を落とした、というストーリーはどうやら大袈裟だったのか。近いうちに答え合わせをしに行かなければいけないだろう。
もう勘弁してくれ。休日は休みたい。お前たちに構っているほど暇人ではない。
石詰の興味はすぐに盤面に移った。純平は将棋なら小さい時に父親に教わってやったことがあるが、軍人将棋は未経験だ。ルールも楽しみ方もわからない。それでも毎日飽きずに三人で楽しんでいるのを見ると、きっと楽しいものなんだろうと思う。しかし、純平は入りたいとは思わない。ここでこの三人の仲間に入ってしまったらなんだか負けた気がする。敵対心とかではなく、こいつらのペースに巻き込まれることが嫌なのだ。
「おお!」
ジャッジをしているイヌが大いに驚いていた。
「さすが軍人だワン」
「困ったわね。そんな奇策で来るなんて思ってないわ。これじゃあ勝てないわ」
雪絵が悲しそうな声を出す。
えへへ、とドヤ顔の石詰がこちらを見た。
「純平さん、ワタシと対戦してみません?」
悪魔の囁きに聞こえた。この口車に乗ってしまったらあいつらの思うつぼだ。
「そうよ。純平さんもたまには息抜きにやったらいいわ」
「そうだワン。ボクがジャッジするワン」
うるせーうるせーうるせーうるせーうるせー!お前らは呑気でいいよな。なにも考えずのうのうと日々を過ごしていればいい。嫌なことはせず、楽しいことだけに精を出す。恵まれてるにも程がある。俺にはやることがあるんだ。仕事をして業績をあげないとなんだ。お前らに構ってる暇なんかないんだよ。
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