戦士

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「ただいま」 「おかえりなさい」と出迎えられる複数の声に混じり楽しそうな雰囲気がする。どうせまた軍人将棋をやっているのだろう。先日あいつらの押しに負けて試しにやってみたが楽しかった。それでもよく飽きずに連日やれるなと思う。 とりあえず手洗いうがいをし、試合が終わるのを待ち一戦だけと試合に入れて貰う。 「純平さんも軍人将棋にハマっちゃったワン」 ジャッジをしているシロが言う。 いやいやいやいや!そうではない。いつもと違う状況が今日起こった。自分にとって大きな出来事だ。仕事のことがどうしても頭から離れない。目の前の試合に集中出来ない。 「純平さん、どうかなさいました?仕事でなにかありましたの」 雪絵はいつものテーブルに置いてあった自分の頭を持ち上げ、純平の前に持ってきて尋ねた。 「そうですね。なんだか心ここに在らずって感じがしますな」 自分の駒をめくりながら石詰が言う。 純平は自分の手に持っている戦車の駒を眺めた。なにを考えているわけではなく、ただ手に持っていた戦車の駒を見ていた。そのまま何も考えずにまっすぐに駒を進めた。ぶつかった先にある石詰の駒と二つをシロが取る。 石詰の顔が少し笑ったように感じた。それでもいくつもの体液が凝固した顔はおぞましいと思う。見慣れていなければ発狂ものだ。 「石詰さんの勝ちだワン」 純平の戦車は玉砕されシロの手元に置かれた。まだ序盤で前線に突っ込んだ戦車が負けた。そんな前の方に戦車より強いやつを仕込んでいるとは思っていなかった。 「純平さん、何事も準備と戦略が重要ですから」 石詰のドヤ顔が炸裂する。と言っても、その顔は体液で血塗られていた。
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