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雪絵
「もしもし、もしもし」
誰かに話しかけられている。夢の中にいるようだった。いや、本当に夢を見ていたのだろう。
「もしもし、もしもし」
純平は体を揺すられた。
硬い質感のものが背中にあたる。夢から目覚めるように億劫そうにゆっくり目を開けた。目に飛び込んで来た光が眩しくてすぐに目を閉じた。
しかし、光がどうこう言うよりも見慣れないものが映った気がした。違う!見てはいけないものが、一瞬開けた自分の目に映っていた。もう目を開けられない。あんなものを見てしまったら、誰だってもう無理だろう。
「もしもし」
さらに体を揺さぶられる。
気のせいだ。気のせいだ。地震がそう感じさせているのだろう。そうだ。きっと地震だ。
「もしもし」
まただ。もう勘弁してくれ。
しかしこのままでは埒が明かない。純平は勇気を振り絞りゆっくりと目を開けた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
目に飛び込んできたものに恐怖を覚え、上半身を勢いよ起こし体育座りの状態で目一杯後ずさりした。背中に硬いものがあたる。シンク下の棚の取っ手だった。
目に映ったものは人だった。髪の長いからたぶん女性。そもそもなぜここにいるのかわからない。しかしそれ以上にげせないのが容姿だ。
明らかに頭が垂れ下がっていた。伸びた首の先に頭が付いていて、重さでだらりとぶら下がっているような感じだ。それが目を開けた瞬間、目と鼻の先にあった。そんな状況に出くわせば誰でも叫びたくなるだろう。純平も例外なく叫んだ。
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