6人が本棚に入れています
本棚に追加
────『なんで成功しないか、わかる?』と聞かれた時、私は咄嗟にこの物語の中の人たちのせいにした。
でも、心の中では答えがわかっていた。
…………ところで、煽ってきてるこいつは『プレイヤー』。そう、名前がプレイヤー。『操作する者』……の、プレイヤー。ゲームとかでもよくあるよな?そういうことだ。
こいつはかなり強い力を持っている。いわば『デウス・エクス・マキナ』────最終兵器だ。
こいつに敵う奴はいない。なので、こいつの問いの答えは『プレイヤーを小説の中に招き入れないから。』……が正解だ。自分で考えてて腹が立つ。
こんな煽ってくるような性格をしていて、しかもパジャマなんて着たまま私の部屋に遊びに来る奴が、だぞ?私の尊厳はボロボロだ。
……でももし、そんな奴を助っ人として物語の中に入れてみろ。「こいつを倒せば全てが終わるぜ!!」とか大声で言って自分で倒しに行くか、世界が終わるレベルで破壊の限りを尽くしかねない。そんなことになったら破綻も破綻、大破綻だ。
まず私たち『舞台裏』の者は、目立ってはいけない。やりにくいから本名で書いてもいいが、設定は少しズラす。それが大きな条件だ。
なのに!こいつを!見てみろ!!
金髪で!この残念な性格で!なんか気持ち悪い唯一無二っぽい翼で!声がデカくて!強くて!コミュ力オバケで!いい感じにイケメンで!
アホか!!!
……はぁ。それで、入れろ入れろとうるさいから、一回だけこちらで書いて『世界に組み込んでみた』んだ。
そしたら、どうなったと思う!?
次のページにはもう世界が破滅してるんだよ!!!!!
……いやなんでだよ!!!!!
どうやったらそんな適当なムーブができるんだよ!!!!!
それに、なんだよ!!
『なんか禍々しいから殺しちゃった★』って!!
そいつは主人公の隣にいる奴だよ!!!勝手に殺すなよ!!!一番の重要人物で、一番動かすのが難しい問題児だよチクショウ!!!
だから私はプレイヤー!お前を世界の救世主の候補から抹消したんだよ!!!
誰がこんな奴を動かしたいって思うんだよ!!!
…………はぁ、はぁ……。
少しでもこの目の前でニヤニヤしてる男のことを考えると、頭が沸騰して何もかもをぶっ壊してしまいたくなる。
……冗談だよ。
私たち『世界売り』は、ペンで世界を救うことが仕事だ。魔力が込められた紙に、ペンで文章を書いて本にする。そうすることで世界のタイムラインを操作し、書いた文章の通りの世界にすることができる。
今までは『金持ちになるルートを作ってくれ』だの、『あの人に復讐したいけど、自分では手を下したくないからあの人がバッドエンドになるようなルートを作ってくれ』とかそんなのばっかだった。
仕事内容がそういうものに特化しているからだというのは否定できない。
まぁそんな感じの仕事を、私とプレイヤーは今までこなしてきた。……プレイヤーがこんな性格になったのは、半分仕事内容のせいかもしれない。私も元々普通に優しい性格だったのだが、今では現実逃避のために二重人格者になり、ついには元の人格が滅多に出てくることは無くなってしまった。そのため『黒い方』が表に出続けている。
……それでも、『世界売り』は必要だ。
でも、まさかあんな仕事が来るとは思わないだろ?
『世界を救ってください』だって?
荷が重すぎるだろ………………。
「はぁ〜〜〜………………」
大きなため息をつき、プレイヤーを見る。
私は奥歯を噛み、睨みつけた。
最初のコメントを投稿しよう!