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 「ちょっと、真斗!最悪…しゃっこい(冷たい)」    私は文句を言いながら、ブーツの中に入った雪を掻きだす。  真斗はいつも私に嫌がらせをしてくるので、こんなことは慣れっこだった。今日は涼也がいるので、反撃するのは諦めて、しおらしくする。  真斗め…後で見ていろよ…  私が腹の中でそう思っていると、突然、隣にいた涼也が俊敏に動いた。  涼也は素早く近くの雪をサッと手ですくったかと思うと、真斗を目掛けてサイドスローでそれを投げつけた。    ボフン!と、その雪の(つぶて)は、見事に真斗の黒いランドセルのど真ん中にヒットして砕け散った。  「あっぶね…」  真斗は咄嗟によじらせた身を元に戻して呟いた。  「調子に乗んじゃねーよ」    涼也は、声変りが始まったばかりのカスカスの低い声で真斗を威嚇した。そして、もう一度、雪をすくってそれを固く握った。  「ヤバ…」と、声を漏らして、真斗は気まずそうな表情を浮かべる。そして「じゃーな」と、捨て台詞を吐き、ランドセルをカタカタさせて走って行ってしまった。  所々に雪が残るランドセルが遠ざかっていくのを見て、頬が緩み、気持ちが浮き立った。  いつも粋がっている真斗がとんずらする様子が可笑しかったのもあるが、涼也が私のために怒ってくれたことが嬉しかったのだ。  
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