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 「美緒、何でそんなニヤけてるの」  「嘘、そんなにニヤけてるかな」  「うん、ちょっとキモイ」  「え~酷い…ちょっと昔を思い出してたんだよ…」  「昔って、いつ」  「んー…中学の頃」    私がそう言うと、彼がちょっと不貞腐れた顔になる。    「中学の頃って、アイツの事?」  「そう…涼也と真斗のことだよ。さっき、外で雪合戦していた子供たち見てたら思い出しちゃって」  「…そういや~アイツ、いい肩してたよな」  「確かに。それより、あの時の真斗のとんずらする姿、可笑しかったなぁ…」  私たちは顔を見合わせてクスっと笑った。  私は真斗の手をとって、指を絡めて恋人つなぎする。  「すっかり大きくなっちゃって、あの頃の真斗は憎たらしかったけど、かわいかったなぁ~…」  「ま~たそうやって、昔の俺をバカにする」  「バカにはしてないって」  「してんだろ~…」  真斗は突然上体を起こすと、私に覆いかぶさり、両手を抑えて私を見下ろす。  その真剣な眼差しと、顔つきには、すっかり大人の男の色香がある。    「プ…」  真斗の真剣な顔が面白くて、私はつい笑ってしまう。  「ほらぁ~…」  真斗も、私の笑いにつられて破顔する。  その笑顔にはしっかりと昔の面影が残っている。  「真斗、大好きだよ」  「お…俺も…」  「え~何、照れてんの」  「くそ…覚えてろ…」  外から聞こえてきた子供たちの笑い声は、新雪の中に溶けていくように、次第に遠くなって消えていった。  そして私たちの笑い声は、ぬくぬくの布団の中に溶けこんで、消えていく。
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